本会会長/富山大学理事・副学長 山西潤一
教育の情報化が加速している。 教育の情報化の第一の目的は、コンピュータ等情報通信技術を活用して「よく分かる授業」を推進し、 児童生徒の学力を向上させるというものであった。
日々の授業において、児童生徒が良くわかる授業を展開しようと、 多くの教員が努力と研鑽を積んでいる。
この良く分かってもらう工夫の一つに、ICTの利活用があるのである。 ICTを利活用すれば、良く分かるわけではない。どのような利活用が良く分かるに繋がるかを研究する必要がある。
過去に多く実践され研究もされてきた、個別化教育のためのコンピュータ利用などは、 基礎・基本の測れる学力向上のためには有効であろう。 一方、総合的な学習の時間が目指す、問題解決能力や、いわゆる生きる力の基礎としてのコミュニケーション能力や協働力などの
育成は従来の方法では解決できない。どのような学力をつけるためのICT利活用かを考え、実践出来ることが求められる。 ICT利活用能力の高い教員とは、単にICTについての知識や技術を持っていると言うことではなく、
教育方法や教材分析、授業設計などの力量ある教員である。
新しい学習指導要領が平成20年3月末に告知され、関連内容が総則で以下のように記述された。
「各教科等の指導に当たっては、児童がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段に慣れ親しみ、 コンピュータで文字を入力するなどの基本的な操作や情報モラルを身に付け、
適切に活用できるようにするための学習活動を充実するとともに、これらの情報手段に加え視聴覚教材や教育機器などの 教材・教具の適切な活用を図ること。」
まさに、適切な活用で教育効果を上げるための教師の力量が問われる。 日本教育工学協会に所属する40を超える全国の団体会員組織のメンバーにとって、日頃の実践研究の成果が活かされる時代になってきた。 各地の研究会活動を共有するためのホームページも改善された。 多いに成果を発表して欲しいと思う。
又、昨年から始めた地域情報化セミナーも好評であった。 協会の賛助会員企業の方々に、開発した教育システムやソフトウェアの紹介をしてもらい、 学校での実践事例をもとにシステムの改良や授業活用の工夫を考えるセミナーとしての企画であった。
多くの賛助会員企業や学校教員、教育委員会の参加を得て、各会場とも大変熱心な議論が繰り広げられた。
教員であれ、企業であれ、このような授業改善への熱い思いが、より良い授業や役立つ教育システムの開発につながり、 教育の情報化を進める原動力になる。又、昨年から文部科学省の委託事業として 「管理職のための戦略的ICT研修プログラムの開発」を始めた。 教育の情報化推進には、なんと言ってもICTを活用して、学校課題を組織的に解決する管理職のリーダシップが不可欠だからだ。
研究は初年度がようやく終わり研修の骨格が作られた。ここでも地域団体会員の協力によって研究を進めることができた。 研究は3年計画で進められるが、その成果が楽しみである。
教育の情報化推進で日本教育工学協会がまさに、先導的役割を期待される時代である。 全国の団体会員教員、賛助会員企業、研究者が協力して、期待に応えられるよう頑張っていきたい。
日本教育工学協会会長 山西潤一
日本教育工学協会では、学校教育を担う教員や教育行政関係者、教育工学研究者、教育産業の3者が協力して、 日々、「教育の情報化」を中心に、学力向上に向けての授業方法の工夫、情報化時代に生きる情報活用能力や情報モラルの育成、
校務情報化の組織的展開などの実践的研究を進めています。
特に昨年からは、教育の情報化を支える教育システムに関する 地域ワークショップを始めました。学校の先生方と協会賛助企業の方々とのコラボレーションです。
児童生徒や教員にとって、使いやすい効果的な教育システムをともに研究開発していこうというものです。
また、文部科学省の先導的教育情報化推進プログラム事業の委託を得て、 「管理職のための戦略的ICT研修カリキュラムの開発」の研究も開始しました。 管理職が学校経営にICTを戦略的に活かしてきた英国を参考にして、情報教育はじめ、 ICT活用のさらなる普及啓発を進めようというものです。
本年もこの二つの事業を核に、明日に向かって、 次代を担う児童生徒の育成とその指導に頑張る先生たちに、夢と元気を与えるICT活用を目指して頑張りたいと思います。 どうか皆様方のご理解ご支援をよろしくお願いいたします。
2008. 1.1
日本教育工学協会会長/富山大学人間発達科学部学部長 山西潤一
新年あけましておめでとうございます。
昨年から日本教育工学協会の会長を引き受け、全国の学校現場の先生方と教育の情報化の推進に取り組んで参りました。
時代を担う子どもたちの学力向上や情報活用能力育成のため、IT新改革戦略のもとに、ますます充実した学習環境が整えられてきていることはうれしい限りです。
しかしここで、この学習環境を最大限活かした授業づくりや教育方法を考えるとともに、常に子どもたちにとって、何がより良い学習環境になるのか考え続けることが重要です。
学力の低下がさけばれるなか、知識としての学力のみならず、その知識を、生きた力として働く学力に変えていく学習に、IT学習環境は不可欠です。
また、新たな施策として教員一人一台のコンピュータ配備があります。
日々、校務や生徒指導に追われ多忙観のある教員にとって、時間的ゆとりを生み出し、生徒とのふれ合いや自己の研修を充実するために、校務の情報化が進められなくてはなりません。
教師のゆとりこそが、子どもたちの学力向上のみならず教育の向上に不可欠です。しかし、これらの問題はコンピュータやインターネットが整備されたから解決するというものではありません。
会員諸氏の知の共有と協働で、頑張る教師を応援していきたく思います。
本年も、より一層充実した教育の情報化が進められるよう、努力して参りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
2007年01月01日
日本教育工学協会会長/富山大学人間発達科学部学部長 山西潤一
赤堀会長のあとを受け、伝統ある日本教育工学協会の会長に推挙され、戸惑いを隠せません。
思えば、20数年前、全国の教員養成学部に教育実践研究指導センターが設立される中、富山大学の同センターで教育工学部門担当ということで研究をスタートさせました。
コンピュータの教育利用が学校現場に広がり始めていた頃、道具としてのコンピュータを教科指導の中でどう活かすか、本会の会長を務められた、坂元先生や西之園先生の著書を勉強しながら、授業づくりをめぐって現場の先生方と日々議論していた若き頃でした。
情報通信技術の進歩とともに、その教育利用のみならず、時代を生きる子どもたちの新しい資質形成のための情報教育が立ち上がり、今や教育の情報化のなかで、インターネットやコンピュータが当たり前のように教育ツールとして教室にある時代になりました。
しかし、教育工学の進歩は情報技術に代表される工学技術の進歩ではありません。
学校の教育環境がどんなに変化しても、子どもたちに「分かる」「考える」ための授業がどうあればいいか、日々教育実践に情熱を注いでいる多くの教師とともに、PDSAサイクルのもと実践と改善をデータを持って考えることが、教育工学の本質ではないかと思います。
幸い、日本には教育工学に関わる団体として、研究者が主体の日本教育工学会(JSET)、現場の先生方主体の当日本教育工学協会(JAET)、教育工学を企業の側から振興してくださる日本教育工学振興会(JAPET)があります。
これら3つの組織が互いにスクラムを組んでこそ、教育が抱える様々な問題を解決する学問としての教育工学の発展があるように思います。
日本教育工学協会は現在、全国40都道府県約5000名の団体会員、活動を支えていただく約40社の賛助会員、理事役員から構成されています。
年々規模も内容も素晴らしくなってきた全国大会の開催が何といっても協会の最大事業です。今年は32回の大会を10月に熊本で開催します。
テーマは「つなぐ」。兼田義昭先生はじめ、熊本県の多くの先生方のご尽力により、実に内容の濃い大変素晴らしい大会が準備されています。多くの先生方のご参加を期待しています。
全国大会のみならず、教育工学に関わる教育セミナーや実践研究をとおして地区活動の活性化も図りたいと考えています。
また、それぞれの地区での素晴らしい実践活動を、より多くの現場の先生方に共有すべく、ホームページを活用した啓発・普及事業、海外の教育工学関連団体との連携、現代的教育ニーズに関わる教員研修など国の教育改革を視野に入れ、現場の先生方主体の協会ならではの事業なども考えたいと思っています。
「迫り来る夕闇の中に、ミネルバの梟が飛び立つ」私の好きな哲学者ヘーゲルの言葉です。ミネルバは知恵の女神、梟はその象徴です。価値観の多様な混迷の時代にあって、今こそ、知を伝える教師におおいに羽ばたいて欲しいと思います。
もとより、身に余る大役ではありますが、永野、吉崎の経験豊富な両副会長の他、新たに企業サイドから大久保副会長を迎え、現場の先生方とともに歩んできた経験をもとに、日本教育工学協会の発展に少しでもお役に立てるよう、最善を尽くしたいと思います。
どうかよろしくお願い申し上げます。